エンディングノート 書き方の一例

人はいつか必ず死を迎えます。どんな形で死を迎えるかは、誰にもわかりません。病気や事故によって意識・判断能力が失われたまま、死までの長い時間を過ごすことになるかもしれず、突然の死によって遺された家族が慌てることになる可能性もあり得ます。

 

しかし、どんな死を迎えるにせよ、死の瞬間までは、自分自身の人生です。どんなお別れの仕方をするか、遺していく大切な物を、誰にどう扱ってもらうか、すべて人生の一部です。

 

自身の人生の一部について、周囲の人に伝えておくことが「エンディングノート」の役目です。少し長い旅に出かけるから、「私の留守の間はこうしておいてほしい」という、いわば「連絡ノート」。気軽にメモ書きくらいのつもりで書き起こしてみましょう。

 

書きたいことをそのままに、要望は多いほど良い

自分自身のことについての連絡ですから、書式に決まりはなく、書きたいことを書きたいように書きましょう。まだ決められないことや、考えがまとまらないことを無理に書く必要もありません。

 

書きにくい箇所は、何も書かなくてもいいし、とりあえずの気持ちを記して、一年後、二年後に書き換えていいのです。「エンディングノート」は正式な遺言書と違い、法的拘束力はありません。その分、自由に要望を伝えられます。

 

「介護は○○を中心にやってほしい」

「ペットは、○○に任せたい」

「葬儀のときは、○○の曲を流してほしい」

 

などなど、要望がたくさんあって、はっきりと示されているほうが、遺された人は助かるし、うれしいものです。事柄についての誰かへの要望は、おのずと遺された人へのメッセージとなります。

また、自分自身で書くのは面倒だという人は、家族と相談しながら、聞き書きをしてもらってもよいでしょう。

 

大事なことは「いつ書く」ではなく、

笑顔で死について語れる「今」、書き始めることです。

 

書きながらイメージする、書きながら情報をあつめる

「エンディングノート」にきまった書式はありません。

 

①自分史

これまでの人生をふり返るとともに、自分だけの記憶や思い出をのこされた人に伝えておきましょう。幼少時代、小学校時代と年代をたどりながら書くことで、自身の考えや思いが整理されることもあります。

*記入事例*

名前、生年月日、出身地

身分証明など

死亡後返却するものなどがあります。紛失の際に役立ちます。

住んでいた場所

幼少期からの思い出

学業・友人・知人について

 

仕事について

 

私の好きなもの

趣味・スポーツ・言葉(座右の銘)・大切にしている物、コレクションなどについて

 

私の足跡

生まれたところ、住んでいたところ、旅行で訪れた思い出の場所など、あなたの足跡と思い出のエピソードを地図に書き記してみましょう。

 

②医療・介護・後見人

終末期の医療・介護についての要望などをできるだけ具体的に書いておきましょう。具体的に書きにくいときは、イメージで「なるべく意識を保っていたい」といった書き方でもよいでしょう。

意思表示ができなくなったり、判断能力がなくなった場合の「後見人」を指名しておくこともおすすめします。

 

*記入事例*

  • 積極的治療・延命治療について

○○歳以上になったらしないなどの区切りの年齢

期待できる余命が年単位であればするが、月・週単位ならばしないなど

  • 医療・介護を受けるときに優先したいこと

できるだけ自宅で過ごしたい

口から食べる、声を出す

積極的治療よりも痛みのコントロールをしてもらいたいなど

 

  • これだけは避けたいこと

長期入院、手術、透析など

 

③葬儀について

死後のことは家族に任せる、という方もいらっしゃるかもしれません。けれど、のこされた人にとっては、むしろ要望を伝えておいてくれたほうが助かる場合が多いものです。

「簡単にすませて」と希望さされる方も、どの程度の「簡単」なのか、書きとどめておきましょう。「○○さんのときのような会場はイヤ」など、見知った範囲で「これだけは避けてほしい」というような書き方でもかまいません。

 

*記入事例*

  • 葬儀の「事前相談」について

事前相談をしている場合、連絡場所(平安祭典)

冠婚葬祭互助会について

  • 私の遺言について

遺言には、法律の定める方式により

自筆証明遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言があります。

 

「自筆証明遺言」

遺言者が自分で一定要件を満たした遺言書を作成します。

遺言者本人が内容の全文を自署し、日付、氏名、押印することが必要です。

遺言状が発見されたら家庭裁判所に持参して、全ての相続人に呼び出し状を発送し、遺言書の検認という手続きをします。

 

「公正証書遺言」

遺言者が証人と公証人の前で口述し、公証人はその内容を文章としてまとめたものです。

公証人は法律の専門家なので、家庭裁判所での検認は必要ありません。

 

「秘密証書遺言」

遺言者が書いた遺言書を封印し、遺言の内容を記した書面に署名押印して封じ、同じ印章で封印し、証人とともに公証役場に遺言書を提出します。

 

  • その他(形見分けなど)について

 物品名ともらってほしい人の名前・連絡先、形見分けする人へのメッセージなど。

このほかに不動産や預貯金などの財産についても、大切な事柄なのでお忘れなく。

 

④私の葬儀のこと

昨今は葬儀のスタイルも多種多様なものになっており、生前に自分の葬儀をデザインすることも可能です。のこされる家族とよく話し合って決めておきましょう。

 

*記入事例*

 

葬儀について

葬儀の宗教、戒名(法名)

通夜・葬儀について

喪主になってほしい人

希望する葬儀の葬儀形式

祭壇・飾りつけ

棺に入れてほしいもの

葬儀費用について

音楽について

式場に飾ってほしいもの

死亡通知について

遺影について

納棺時の服装

親族代表の挨拶をしてほしい人等

 

遺される家族とよく話し合って決めておきましょう。

 

⑤法要・仏壇・墓について

*記入事例*

 

法要について

四十九日、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌等法要をどのように営むか。

 

仏壇について

仏壇についての要望

 

お墓について

お墓を用意している場合は墓地の名称、所在地、連絡先等

 

希望するお墓について

墓の用意がない場合は、どう納骨されたいか。あるいは散骨などの希望など。

 

家の家紋

家紋があれば貼付しておきましょう。

 

家の菩提寺 

菩提寺がある場合は、その所在地と連絡先、住職の名前。

 

⑥私の伝えておきたいこと

親戚、友人、知人、所属団体などをまとめておき、病気になった際、死亡した際など、どのようにしてほしいか記入しておけば、家族が連絡をとる際に迷わずにすみます。

 

保有している資産をリスト化しておけば、療養や介護、葬儀などにどの程度の費用を使えるかが、自身にも、家族にもイメージできます。家族が相続の手続きを進めるためにも財産の情報は欠かせません。

印鑑や通帳の保管場所、キャッシュカードの暗証番号などは別途、特定の人に伝えておく、印鑑と通帳の保管場所は別々の人に伝えるなどの工夫もしましょう。

 

*記入事例*

私の家族・親戚について

私の配偶者・子ども・父母・兄弟姉妹

私のペット

親戚の住所録

私の死亡時に連絡してほしい友人・知人

身内の方々の命日など

 

所属団体(グループ)について

趣味のサークルや同窓会など所属する団体について記入します。

 

財産について

不動産について

預貯金について

株式について

その他の資産・権利(ゴルフ会員券・国債・公債・純金積立やプラチナ積立など)

クレジットカード・電子マネーなど

生命保険・損害保険

公的年金

私的年金

貸付金

借入金・支払いローン

携帯電話について

パソコンについて

ホームページのIDなど

 

⑦大切な方へ「ありがとう」のメッセージ

家族や友人など大切な方々へ「ありがとう」の気持ちをつたえましょう。

 

⑧遺影写真を準備しておきましょう

遺影に使いたい写真やあなたのお気に入りの写真を選んでおきましょう。

ご家族は慌ただしい中で写真を選ぶため満足のいかない仕上がりになることがあるかもしれません。

また、ご家族があなたとの思い出を振り返られるよう、お気に入りの写真もまとめて保存しておきましょう。

 

以上、主な記入事項をまとめてみました。「これなら書ける」とおもわれることから少しずつ書いてみてください。

そして、一番大事なことは、いざというときにきちんと「エンディングノート」を読んでもらえるようにすることです。

身近な人など、複数人にノートの存在を伝え、保管してある場所を知らせておきましょう。口頭だけでなく、書面やメールなど記録として残る方法をおすすめします。

 

いかがでしょうか。

これだけの内容を、手書きで書き残すのは大変な労力を要します。

パソコンをお持ちでしたら、メインの文章はWordで、財産の管理などはExcelで簡単にすませてみてはいかがでしょうか。

 

パソコンサロン間間が、お力になります!